最終回・第12回 「まとめ~ドミナントモーションから動和音へ」音楽のクオリア~不定調性論の挑戦~


20140415

本連載の予定

第0回 序論(上) (下)

第1回 和声の存在を再確認する

第2回 自然倍音の数理の不思議

第3回 下方倍音列の活用

第4回 数理親和音モデル
第5回 和声単位という和声構築法
第6回 和声の分子構造
第7回 増四度環と裏領域
第8回 調という幽霊を発生させる和声の反応領域
第9回 和声二元論が成り立たない理由
第10回 長調と短調の二極化から旋調性へ
第11回 負の音を作ってみよう
最終回 まとめ~ドミナントモーションから動和音へ

(※進捗によっては、若干のテーマ変更の可能性もございます。ご了承下さい。)

最終回 まとめ~ドミナントモーションから動和音へ 皆さん、こんにちは。 最終回までお読み頂き、心より感謝申し上げます。音楽理論と銘打つサイトに参加できた ことを大変うれしく思います。厄介な文章にお付き合い頂きました金子編集長はじめス タッフの皆様、ありがとうございました。

不定調性論は、まだまだ吟味が必要な音楽鑑賞法/分析法/作曲技法集です。

統一されたコンセプトは「理論」です。そして理論によってどのように音楽を捉えられる か、という結果の提示が大切です。 普段のレッスンで、私がその場限りの感性で語ってしまっては、受講される方の参考には なりません。私がどのように音楽を考え、結果としてどんな発想に至ったか、を示すこと で受講生は「それは自分の考えと違う」「私はそれをもっとこう考えます」とオリジナル な発想の確立に行きつきます。

これを 60 分というレッスン時間で明確にディスカッショ ンできなければいけません。そうした必要性から、私は自由度の高い解釈法を持つ音楽論 としての不定調性論をまとめ、必要であればこれを用い、受講生が自己のスタイルを確立 する起爆剤にする、というやり方を採用しています。

さて、最終回は教材第五章に出てくる「動和音」についてです。本邦初公開です。

Dm7 G7 |CM7 |

上記の和声進行が C メジャーキーの II-V-I であることは、容易に確認できるでしょう。 問題は「なぜ G7 は CM7 に向かった時、解決感を与えるか」です。 不定調性論では、これを「音楽的クオリア」という個別の感覚にまで分解しました。慣習的感覚であるドミナントモーションを“無視”することは私達の平均律文化圏では極めて 困難です。これは文化に根差した感覚である、という前提がある事を明記します。

教材ではドミナントコードそのものを完全に独立させました。 次のコード進行を弾いてみてください。

1.  Dm7 G7 |Em7 A7 |Dm7 G7 |CM7 |

2.  Dm7(♭5) D♭7 |Em7(♭5) E♭7 |DM7 G7 |CM7 |

1は例示的なコード進行でしょう。しかし2は変則的です。それでも最後に G7⇒CM7 があ ることで C メジャーキーを認識できると思います。

これを「ドミナントコードの独立」と捉えるのです。
短調の V7 は、長調の V7 を借用したものだ、という解釈がありますが、不定調性論では、 この解釈を発展させて、V7 はあらゆる場所に挿入されて I に帰結する時、調の発生を感 じさせる独立した和音である、としました。

この独立した和音=属七和音の特性は一体何なのでしょうか。 その問題を、その和声構造の中に創出してみました。 属七和音は、自然倍音の第七倍音までを和音化したものである、という発想を聞いたことがある人もいらっしゃるでしょう。この発想を更に押し進めます。 発想の過程は省略しますが、

G7⇒G△+裏領域音 f

とします。この裏領域音については、本連載第七回でも扱いました。ある音から増四度上 の音のことです。この裏領域の存在は、本連載第四回で提示した「数理親和音モデル」と 考え併せると、増四度の同時確立は、12 音全てへの親和可能性を作り出してしまう、と いう構図でしたから「その和音の内部音よりも外部音への連鎖及び親和を拡大する」とい う存在にならざるをえません。これは科学的な性質ではなく、不定調性論の考え方ではそうなってしまう、という「浮かび上がった公式」に基づいて方法論を作り出していく一貫 性を重視したわけです。

話が前後しますが、G7 が自然倍音から作られたのだとしたら、その基音である g に解決 するのが本来なら最も理論的です。つまり下記のとおりです。

G7⇒G△

しかし、調的感覚を持つ耳には、G7 が G△に帰着するよりも、C△に帰着した方が、解決 感があるはずです。ここに小さな論理の矛盾があります。この矛盾を感覚的に解決するた めに、先に確立した「裏領域の同時確立の時に表出する 12 音への拡散親和性」を活用す るわけです。つまり、

G7 が裏領域の同時確立された和音である、と分析時に設定した時、この和音は G7 内部の 音に解決するよりもその外部の音への親和を優先する和音である、と規定するわけです。

そうなってはじめて G7 が CM7 や Cm7 に向かうベクトルを論理的に作り出すことができま す。そして機能和声論のドミナントモーションの構図をこの裏領域の同時確立という考え 方で導き出すわけです。
更にこの考え方を発展させます。G△の裏領域音は f だけではありません。

G△=g,b,d
g の増四度音=c#
b の増四度音=f
d の増四度音=a♭ というように、それぞれの構成音の裏領域音があります。これらを足したとしても、外部 の音への親和性は作れる、としなければ論理的におかしくなります。それでは以下の拡張 されたドミナントモーションを体験してみてください。

G7-CM7(または Cm7 等) G△(♭9)-CM7(または Cm7 等) G△(#11)-CM7(または Cm7 等)

これらはドミナント 7th のテンション感を有するので、斬新な感じはないでしょう。 さらにこの考え方をサブドミナントモーションに活用します。ここでは F△⇒CM7 をその 帰結進行として考えます。

F△=f,a,c
f の増四度音=b a の増四度音=d# c の増四度音=f#

F7-CM7 F△(♭9)-CM7 F△(#11)-CM7

新たなる拡張されたサブドミナントモーションです。 この「裏領域を追加した和音」を不定調性論では「動和音(どうわおん)」と呼びます。 外部の音への親和性⇒動的な性格を持つ和音、という抽象的意味になっていきます。解決 和音とするのではなく「他に進行したがる和音⇒落ち着かない動的な和音」という位置付 けです。そして動和音を拡張する段階に移ります。活用法をいくつか列挙します。

G7⇒CM7(#11)
これは CM7 の構成音 c の裏領域音 f#を CM7 に加えることで「動的な終止和音=ざわざわ するような感覚を与える落ち着かない終止和音」という状況を作ります。

Dm7(13)⇒G7(♭9)⇒CM7(#11)
ここでは Dm7 の裏領域音を追加して、さらに全体的に動的な要素を持つ和声進行を作りま した。

Dm7(♭5)⇒Gm7(♭5)⇒Csus4M7 これは動和音による和声解決進行の例です。こうした近代和声の属七和音のいくつかを動 和音という発想でかなり取り込めると思います。

教材では、さらに「静和音」を定義し「動進行」「静進行」と和声進行を分類できる手法 を拡大しました。またブルース 7th と動和音との違いも明瞭になります。 これは「属七和音の性格はいったい何か」という問題について論究したものです。なかな かこうした根本的テーマの発展を問う理論書もありませんので、今回掲載させて頂きまし た。先達の皆さまにいろいろご意見を頂けましたら幸いです。

話題は尽きませんが、これで一時修了となります。今回提示したアイデアが、皆さんの何かヒントになったとしたら、大変光栄で有難く思います。

最後までお付き合い頂きましてありがとうございました。 ご質問、ご感想等はこちらまで。

 


 terauchikatsuhisa

寺内克久  Katsuhisa Terauchi
大学卒業後専門学校にてジャズ理論を学びながら作曲/演奏活動、作曲家としてデビュー後大手音楽専門校へ就職。その後music school M-Bank発足と同時に、経営/運営スタッフとして、またギター・ウクレレ・ベース・作曲・DTMの講師として活動。最先端のポピュラー/ジャズ和声学を目指し『不定調性論』を提唱し、レッスンでの活用、各方面での研究発表を行いながら、実践的で個性を活かす音楽レッスンカリキュラムのコンサルタントとしても活躍中。日本音楽理論研究会幹事。日本リズム協会会員。毎週250kmを乗る、ロードバイカー。M-Bankの通信講座ブログ , 不定調性教材のお申し込みはこちらから

Be the first to comment

Leave a Reply

Your email address will not be published.