本連載の予定
第3回 下方倍音列の活用
第4回 数理親和音モデル
第5回 和声単位という和声構築法
第6回 和声の分子構造
第7回 増四度環と裏領域
第8回 調という幽霊を発生させる和声の反応領域
第9回 和声二元論が成り立たない理由
第10回 長調と短調の二極化から旋調性へ
第11回 負の音を作ってみよう
最終回 まとめ~ドミナントモーションから動和音へ
(※進捗によっては、若干のテーマ変更の可能性もございます。ご了承下さい。)
第 4 回 数理親和音モデル
皆さん、こんにちは。 今回は前回までに登場したコンテンツを活用して「膨らんだ単音」の不定調性論的モデル の紹介です。
図1 先に結論です。図1をご覧ください。これが不定調性論における「膨らんだ単音」の範囲、と定めました。図1を解説したのが下記の図2です。
図3 青字で囲った範囲だけですね。しかしこの範囲からだけでも十分現在多彩な音楽を考えることができます。しかしこれだけでは理論的に一点だけ抜けている点があるのです。
たとえば一つの実音基音 c から、c,e,g という自然倍音が発生し、それを収集して三和音
を作るのであれば、更に考えれば実音となった e,g が当然次なる基音となって、e⇒g#,b、 g⇒b,d と同様に発生音がある、という範囲までを考えなければなりません。図 4 の音集
合 c,d,e,g,g#,b の 6 音音階は C△の究極のコードスケールである!と思えるかもしれま せんが実際には C△で用いられるコードスケールは c,d,e,f,g,a,b の C アイオニアンが一般的です。また「では g#や b が発する自然倍音については考えなくてよい のか」という次なる疑問になり、きりがありません。
そこで「どこまでを自然発生音として音楽理論に用いるか、を定める必要がある」という 事を示しています。そこで不定調性論は、一音が発する上下の領域音を「数理親和音モデ ル」という形式に落とし込んだわけです。 このように自由に倍音の発生範囲を個人の裁量で定める考え方を「基音の反応領域を定め る」と表現します。皆さんが普段から自然と行っていることを、あえて明記したわけです。
“どこまでを想定し、何を基準に、どこまでを許容範囲とするか”
ということですね。この範囲は常に変化していくので、その変化に対応できる範囲設定を 行ってみました。
12 音のうち図 1 にない音は、c#と b です。ちょうど基音の半音上と半音下です。 これがなぜか、については、第七回で扱う「裏領域」に関わってきます。
前回、上下の倍音列について、その発生の形態を見てきました。下方音が、上方に基音を 生成するためには他の上方音の発生を考慮しなければ、基音を発生させることができない、 としています。そのために図 2 のように下方音の上部に各上方音が記載されています。そ してこれらの範囲を定めるのが「オクターブレンジ」です。
不定調性論は、レンジ1-4までの範囲が自由に定められます。伝統的な調性音楽論を模 倣したければ、レンジ 2 まで(c-g-c)で定めても充分です。レンジ 3 までに拡張する理 由は、ブルースや、アウトサイドなプレイをするジャズ・フュージョンをその範囲に含め るためです。
このモデルには、基音 c からみて、m3rd=e♭, ♭5th=g♭(f#)といったブルーノートの位 置付けになる音も出現していることがわかります。これにより、旋律で不定調性論でデフ ォルメされたブルーノートフレーズを作ることが可能になるのです。 しかしながらこれは「ブルーノートの発生」が起きているのではなく、単音の親和許容範 囲が 10 音に広がったことでこうした音が出現したに過ぎません。 しかし結果として、調性音楽と民族音楽等の和音や旋律を、同じモデルから作ることがで き、その理論的障壁が無くなる、という点が大変重要なのです。
このように一音が親和する範囲を策定できたら、いよいよ和声の構築です。 今回は以上です。 ありがとうございました。 ご質問、ご感想等はこちらまで。
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