今回の対談はわかりやすい音楽理論サイト「soniqa.net」を運営する吉松悠太さん。自身で考案した「マクロ音楽理論」、従来の音楽理論がミクロな事柄を扱うようなものに対してさらに実用的なものにするために楽式やドラムのフィルイン、メロディなども扱う大規模な音楽理論。しかしその構造は意外とシンプルでした。
(記事構成/原田和真[脚本家])
「マクロ音楽理論についてストレートに聞いてみた」
金子 マクロ音楽理論についていろいろ話を聞きたいんですけど、一応サイトでは導入の方が書いてありましたけど
吉松 そこから話しますか?
金子 ちょっといろいろ説明して欲しいです
吉松 根本としては何らかのリズムでも、ある程度のコード進行でもメロディラインでも、それらがどういう構造になってるかってのをモチーフの展開みたいなところから着想を得てやっていて
金子 うんうん
吉松 既存のコード理論はトニック、ドミナント、サブドミナントっていう基軸があるじゃないですか。それ三つに分けるから解りやすいなみたいな
金子 ふんふんふん
吉松 じゃあ思い切って何個かに分類してみようってことで五つに分類してみたんですよ
金子 はい
吉松 フレーズってのは最初に”生成”すると、何らかの形で
金子 うんうん
吉松 で、よくベートーベン(運命)とかを例に出すんですけど、最初「ダダダダーン♪」って始まるじゃないですか
金子 あ~運命はもう!うん!
吉松 で、次に「ダダダダーン♪」って音程が変わるだけで繰り返される、これがマクロ音楽理論では”展開”していると
金子 はいはいはい
吉松 逆に音程が変わらないで繰り返すパターンもあってそれを”反復”という風にしようと
金子 ふ~ん
吉松 最後に終わり方になる時に、二つ終わらせ方としてあって
金子 はい
吉松 それがその、今まで出てきた要素を部分的に切り取るっていうパターンが多いんです
金子 あ~なるほど
吉松 結構長いモチーフがあって、そのうちの前半だけ切って最後は変えるみたいな
金子 あ~はいはいはい
吉松 その前半だけ切り取ったよってところを”引用”っていう風にして、最後の変えたところ、最後のグニャっとしたところを”液化”ってことで
金子 うん
吉松 ”生成””反復””展開””引用””液化”っていうこの五個があれば大体の曲の形ってのは説明できるんじゃないかなっていう風に考えてます
金子 ふ~ん
吉松 まぁ何個にするか最初は結構迷ったんですけど
金子 あ、そうなんだやっぱり!へぇ~
吉松 やっぱり本当に全部自分で決めてくんで「本当に5個で大丈夫かなぁ」ってので二ヶ月ぐらいこう…
金子 じゃあもっと多かったりしたってことですか?
吉松 6個か7個要るんじゃないかなぁ~って、でも結局思いつかなかったですね。分析をしてみると、きちんとした形になってるものはこの5個あれば十分説明できたなっていう風に
金子 へぇ~
吉松 最初はメロディから始まったんですけど基本は、でも考えていけば特にドラムのリズムパターンに関する理論ってないじゃないですか
金子 うんうん
吉松 どういう風に作っていくのかな~って考えた時に、それも”C”、”E”、”R”、”Q”、”L”ってのが五つあれば表現しやすいな~っていう
金子 あ~うん
吉松 フィルインっていうのがあるじゃないですか
金子 あ~あるある
吉松 そのフィルインってのがなんで入るの?ってのも何らかの理論的な理由付けにみたいなことで固めたかったんですよ
金子 はいはいはい
吉松 フィルインは結局、それが人間にとって区切りになるから気持ちいいよっていう話なんですけど
金子 うん
吉松 これがドラムにも言えるし、コード進行も全く同じじゃなくて、基本がダイアトニックで進んでったらサビの直前にはちょっと変わってるんですよ。これってフィルインと一緒じゃね?って思って
金子 なるほどね~
吉松 メロディに関してもフィルインと一緒なんじゃないかな~って思うところがあって。そういう風に考えていった時に「あ、全部一つに繋がるな」ってなって。そういう感じで出てきたんですよね
金子 マクロ音楽理論って実用的な作曲理論になってますね
吉松 それを目指してます
金子 出来た音楽を説明する理論じゃなくて、作る為の理論ですよね
吉松 はい
金子 それが凄く良いな~って思っちゃったんですよ。まぁバークリーメソッドでも作れるんですけど、やっぱ分析が楽しくなっちゃくんですよねバークリーメソッドって
吉松 あ~
金子 これ覚えれば作れちゃいますよね、コードを三つ四つ覚えて、リズムパターンが一個あれば、最後は変えなきゃな~みたいなこと思うわけでしょ?それって実用的でいいな~って凄く思ったんですよね
吉松 で、特にメロディラインの構成の仕方ってのががわかんないって人が多いな~って気がしてるんですよね
金子 そうそうそう
吉松 なんでそうなっちゃうかっていうと、それに対する規範がないんですよ全然
金子 うんうん
吉松 コード理論が今やっぱり音楽理論としては一番メジャーだと思うんですけど、それはコード進行しか定義しない
金子 うん、しない
吉松 上に何乗っけるの?ってことに関しては多分みんなセンスだと思ってると思うんですよね
金子 うんうん
吉松 マクロ音楽理論で、メロディが良いと言われて売れてるバンドの曲を分析してみると、さっき言った”生成”からの流れに綺麗に沿って流れてるものが凄く多いんですよ
金子 う~ん
吉松 それこそ平井堅の瞳を閉じてなんかも、
金子 あ~うんうん
吉松 メロディは変わるんですけどリズムは一緒なんですよね
金子 そうだね
吉松 分析してる人からしたら当たり前なんですけど、知らない人からしたらそこが”展開”してるってことにそもそも気付けないと思うんですよ
金子 うん、そうそう
吉松 そういう隠れた展開とか凄く多いと思うんですよ。それをキチンと「そういうものがあるんだよ」「それに基づいた曲がいっぱいあるんだよ」「その通りにいけば作れるようになりますよ」っていう規範が無ければ誰も知らないまま終わってしまうって思って
金子 その通りですね確かに。メロディに言及してるものって俺が知ってる範囲でも凄く少なくて、メロディ理論ってのはあんまりないよね~
吉松 そうでうすね。でもクラシックはメロディに関してはものすごい細かいものがあるじゃないですか
金子 あ~確かに
吉松 でもそれが全く活かされてないなっていう風に思って、ちょっとクラシックのそういうとこだけつまみ喰いして持ってきたっていう
金子 はいはいはい
吉松 そういう感じです
金子 凄い良いですよねだからね。俺やることねぇやって思っちゃう(笑)
吉松 アハハハ(笑)
金子 本当に実際に使える作曲理論だよね。みんなこういうの読めばいいのになって思う。作曲どうしたらいいですかって聞かれたらこのサイト送ればいいですよ(笑)
読んでいただきありがとうございました。興味ありましたらsoniqa.netもみてくださいませ。
最後に記念撮影しました(笑)
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金子将昭 Masaaki Kaneko http://www.masaaki-kaneko.com/
1982年富山県生。洗足学園音楽大学音楽学部ジャズ科ピアノ専攻卒。
大学にギター科で入学後すぐ、経験無しのピアノ始め、二年次よりジャズピアノ科へ転専攻。サポート仕事と和風なジャズを演奏する自己の音楽活動と並行しながら、日本初の音楽理論Webマガジン「サークル」編集長、(同) 前衛無言禅師 代表、東京音楽理論研究大学主催、劇団を作ろうプロジェクト主催、音楽アプリ「lepot」の開発、劇団ブラックラックへ楽曲提供、フリーランス向けの確定申告サイト運営など多岐に渡る。現在、百人一首曲付けプロジェクトとジャズスタンダードをトーク・演奏で楽しむ動画をYOUTUBEチャンネルにて公開。「百人一首曲付けプロジェクト」で検索。
吉松悠太 Yuta Yoshimatsu
音楽理論家。1990年北海道生まれ。16歳から作曲と音楽理論の勉強を始め、2010年に音楽理論の総合サイト「SONIQA」を開設。慶応義塾大学にて岩竹徹教授のもとで和声を学び、独自に構築した音楽理論である「マクロ音楽理論」を提唱する。現在は「PLUGMON.org」で英語圏へもDTMの情報と製品を提供している。
SONIQA : http://soniqa.net
PLUGMON.org : http://plugmon.org
現在の所属:劇団ブラックラック、劇団あーてぃすとら、ラフィクション(お笑いユニット)
HP:http://www.tomorock-photo.net/
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