第6回 「和声単位という和声構築法」音楽のクオリア~不定調性論の挑戦~

20140415

本連載の予定

第0回 序論(上)(下)

第1回 和声の存在を再確認する

第2回 自然倍音の数理の不思議

第3回 下方倍音列の活用
第4回 数理親和音モデル
第5回 和声単位という和声構築法
第6回 和声の分子構造
第7回 増四度環と裏領域
第8回 調という幽霊を発生させる和声の反応領域
第9回 和声二元論が成り立たない理由
第10回 長調と短調の二極化から旋調性へ
第11回 負の音を作ってみよう
最終回 まとめ~ドミナントモーションから動和音へ

(※進捗によっては、若干のテーマ変更の可能性もございます。ご了承下さい。)

第 6 回 和声の分子構造

皆さん、こんにちは。
今回は 12 音の構造を一つのモデルにして、あらゆる和音が作れるようにします。

C7=c,e,g,b♭ Em7(b5)=e,g,b♭,d

この二つの和音を見てください。e,g,b♭が共通していますね。これはc の上方領域(レンジ 3)の構成音=d の下方領域(レンジ 3)の構成音 という等式が成り立つからです。 このように、ある音の上方領域は、ある音の下方領域になります。これは本来微細に異なる振動数を 12 音に振り分けた平均律ならでの公式といえます。これを全ての音について 調べると下記の表 1 にまとまります。

表1

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表 1 を「十二音連関表」といいます。
基音 c のレンジ 3 までの発生音は e,g,b♭(a#)で表 1 の「上方エリア」に収まっています。 では基音 d#はどうでしょう。レンジ 3 までの出現音は g,b♭,c#で、やはり上方エリアに 収まっています。f#,a が基音の場合も同様です。

では下方領域はどうでしょう。

基音 c の下方レンジ 3 までの発生音は a♭(g#),f,d です。 これらは表の「下方エリア」に収まっています。では基音 a の下方発生音はどうでしょう。 f,d,b ですからやはり下方エリアに収まります。つまりこの表はレンジ 3 までの平均律 12 音の発生音を類別したものなのです。

また、基音 g の上方発生音は b,d,f ですから、これは表の下方エリア、基音 f の下方領域 は c#,b♭,g ですから表の上方エリアに該当します。平均律 12 音によって基音エリア、上方エリア、下方エリアという 3 エリアがぐるぐる連 続体となっている、ということが分かります。まず中心となる音を c と定めた、としましょう。

そして下記図 1 ようにピックアップした 音を色付けしてみます。

図1

zu1

図1 これは中心音が c と設定されていますから、c で表記すると、

C7(♭5)(9,♭13)=Caug+F#aug

という和音になります。この対称性がきれいですね。

中心音を任意に定め、一般的に認知できる図形的対称性、相似性、または一般的には認知 しづらい単独思考により完結される個人の動機などの創作事由(作曲者のクオリア)を構 築しながら和声を作る方法です。

下記図 2 のような和声進行も作ることができます。

 

図2 

zu2

 

G7M7(♭13,13)omit3⇒C7M7(♭9,♭13,13)omit3 これは拡大解釈されたドミナントモーションといっても良いでしょう。12 音全てを用い る進行です。

~スクリャービンの神秘和音を連関表で考える~

アレクサンドル・スクリャービン(Alexander Scriabin, 1872 – 1915)は、ロシアの作曲 家でありピアニストです。彼がその代表作『法悦の詩』《交響曲第 4 番》作品 54 などで 用いたとされる不思議で幻想的な響きである「神秘和音」を連関表に配置してみましょう。

図 3 を見てください。

 

図3

zu3
コード表記は C7(♭5)(9,13)となります。ここには先のような対称性はみられません。

図4

zu4

図4 しかし連関表を拡張してみると図 4 のような対称性を作ることもできます。

A#が二つ現われる所から、この和音の和声単位分解を、 A#ul3+El5(=B♭aug+Am) と考えることもできます。またモデルの中点 a を中心音に変化させて、 B♭aug |Am |

というコード進行や、モデルの最下部 d を中心音にして、
Am(11) |D7(♭13) | といったコード進行は、神秘和音の構造を二小節で作っている、ともいえます。このよう に一つの和音が持つ領域的特性を皆さん各位の発想で展開することもできます。神秘和音 は Im+II♭aug である、となれば、Am6(11)とのような和音は、神秘和音になる一歩手前 の和音ということにもなり、その和音が示す響きにクオリアを働かせやすいと思います。

さらに連関表を図 5 のように拡大してみます。

図5

zu5

図5 このように音名の上に、図形を配置し音楽を作る素材にすることもできます。

この自由度の高い創作可能性が芸術表現を構築するための方法論では不可欠です。音が鍵 盤上の配列から、二次元に広がるわけです。これは三つのエリアが生じたことに端を発しています。

また、一つの和音を単純に構成音だけを表記する手法もあります。不定調性論において 「和声の分子構造表記」と呼ぶ簡易表記です。詳細は省略しますが図 6 に表記例を示します。

 

図6

zu6

図6 鍵盤やフレットに並ぶ音からコードを作る、という発想を拡大し、皆さんそれぞれの可視化された和声世界を作ってみると、そのサウンドの違う意味が見えてくるかもしれません。

今回は以上です。 ありがとうございました。 ご質問、ご感想等はこちらまで。

 


 terauchikatsuhisa

寺内克久  Katsuhisa Terauchi
 
大学卒業後専門学校にてジャズ理論を学びながら作曲/演奏活動、作曲家としてデビュー後大手音楽専門校へ就職。その後music school M-Bank発足と同時に、経営/運営スタッフとして、またギター・ウクレレ・ベース・作曲・DTMの講師として活動。
最先端のポピュラー/ジャズ和声学を目指し『不定調性論』を提唱し、レッスンでの活用、各方面での研究発表を行いながら、実践的で個性を活かす音楽レッスンカリキュラムのコンサルタントとしても活躍中。日本音楽理論研究会幹事。日本リズム協会会員。毎週250kmを乗る、ロードバイカー。M-Bankの通信講座ブログ , 不定調性教材のお申し込みはこちらから

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