生島佳明「同じDm7なんて一つとして無いんだよね」
前回の対談はこちら!!
金子 アドリブを演奏する僕たちは、コードネームという記号に対してパズルみたいにスケールや音列を当てはめてるところが少なからずあると思うんです。現在は音楽理論がある程度まで充実してきおりDm7にはDドリアンというものが一番ベーシックなスケール選択方法ということになっていますが、大事なのはDm7でDリディアンを使ってはいけないという意味ではないという事ですよね。
生島 そうだよね。過去にリディアンスケールを使ってかっこいいフレーズを作った人、あるいは有名になったフレーズなどが現代まで引き継がれてきていればDm7でDリディアンスケールの使用は音楽理論では一般的になっていたんだろうね。
金子 ちなみになぜDm7でDリディアンスケールの話ばっかりするかというと、今そういった事が先進的なアーティストによって世界では行われているからですね。例えばデンマーク出身のピアノトリオのPHRONESIS(フロネシス)なんかはCm7でCリディアンb7を使用しています。
生島 中にはいるんだよね。ただ一般的には今まではなぜかいなかったんだろうね、恐らく。それで音楽理論ではDドリアンが押されたんだろうね。
金子 ただ、ある一定の音列をどんな状況でも弾くっていう方法論は確立されてますよね。それは音列が持ってる特徴をそのまま乗っけるっていう方法ですけどね。
生島 そうだね。ポピュラーなのは四度フレーズとかだね。他には拡大解釈として一般的なのはイン―アウト―インとかだね。アウトにするとどんなフレーズでも使えちゃうからね。
金子 そうですね。インで挟むとリディアンスケールは一般的に使えちゃいますね。
生島 でもそういった事より大事なのは何を表現してその音になったのかってこと。
金子 そうですね。Dm7という前後の流れからリディアンで表現するのが一番自然で感じたのか、あるいは一番遠い音を探した結果それだったのか、あるいはただの反骨精神か(笑)。ただそう考えると本当はかなりの可能性をもっているんですよね。
生島 そう。コードネームによって実はDドリアン以外のたくさん可能性を秘めているはずなんだよね。
金子 しかし、やはり現実として多くの可能性を無視してDm7がやってきたら「Dドリアンで」って対応している事の方が世の中のアドリブ奏者の多数派ですよね。
生島 Dm7という記号で見ると、どの曲でコードネームとしてみると同じ物だけど、音としてみると同じDm7なんて一つとして無いんだよね。
金子 そこなんですよね。記号で見ると同じ顔に見えちゃうという事があるんですよね。
生島 本当はDm7だってどこで現れても表情が違うんだ。そういった意味ではそこがDm7かどうかなんて本当はどうでもいいんだよね。
金子 その音が前後の音楽においてどのように響いているかを判断できる感性が必要であり、それを音で表現できる事が重要であるからコードがなんであるかは必要ないということですね。
生島 ただそうなると音楽理論の雑誌で音楽理論が必要じゃないって対談をしてるっていう事になってしまうんだけど、・・・大丈夫かな(笑)。
金子 これはそういう事だって発信しちゃう雑誌なんで大丈夫です(笑)。
生島 音を音楽理論に対してフラットに捉えてくれてる雑誌で良かった(笑)。
【対談】金子将昭×生島佳明(3)「もともと音を言葉で伝えるなんて無理な話だと思うよ。」
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金子将昭 Masaaki Kaneko http://www.masaaki-kaneko.com/
1982年富山県生。ジャズピアニスト。合同会社前衛無言禅師代表社員。洗足学園音楽大学音楽学部ジャズ科ピアノ専攻卒業。大学時にギター専攻で入学したが2年次よりピアノ科へ転専攻し19歳よりピアノを始める。
堂本光一、大橋卓弥(スキマスイッチ)、imalu、ジョナサン・カッツ、類家心平、マークトゥリアン、フレッドシモンズとのセッションライブやバンドサポート、ミュージカルなどでピアノを担当。
ミュージシャンによる音楽理論研究会『東京音楽理論研究大学』を主催。
生島佳明 Yoshiaki Ojima
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