「自分は何にもできない。だからインディーのままメジャーでやる」
今回はCD Baby説明会を体験。この取材のためにいつも通りの形でやって頂きました。
いつもはCD Babyの使い方や先端の音楽情報・ライセンシングなど、インディーミュージシャンに必須の情報をたくさん提供しているこの説明会。
今回は海外ミュージシャンに学ぶ、成功事例の話。
(インタビュー・構成/金子将昭、写真/たーまん)
−後藤啓次−
コンサルタント。1962年生。中学時代からバンド活動を始め、仕事を始めてもインディミュージシャンとしてオリジナル曲を発表し続ける。現在はコンサルタントを生業とし、音楽活動もしつつ、CD Babyをはじめとする海外のインディアーティスト向けサービスを利用する日本のアーティストの手助けをしている。http://jp.members.cdbaby.com
インディーのままメジャーとうまく付き合う
後藤 次はマックルモアー (Macklemore)というラッパーです。メジャー契約はしていなくて自身のレーベルで活動しています。
そしてメジャー志向のあるアーティストの活動スタイルで理想形と言われている方でもありますね。
金子 メジャーに行かずに自身のレーベルでうまく活動しているっていうことでしょうか。
後藤 元々は2000年くらいからアマチュア活動を初めてEPを作ったりしていました。地元のポートランドでは少し有名だったようです。
そして2013年に8枚目のシングルであるThrift Shopがビルボードで1位をとり、その年の一番売れたシングルになりますが、ずっとインディーです。
金子 それはすごいですね。
後藤 ちなみにCD Babyのお膝元はポートランドで、マックルモアーと同じです。彼は当初からCD Babyを使ってました。全ての音楽活動(販売・マーケティングやマネジメントを含む)を自分達でしたがるミュージシャンがいる中で、マックルモアーは「自分はそんな才能はない」と考えた。
CD Babyはアルバムを登録すれば後のことは全部やってくれるからお全てお任せにして活動を続け、最終的にビルボード1位になります。
金子 1位はどうやってなったんでしょうか。
後藤 まずはCDを出しました。その次にラジオでヘビーローテーションされ、そこでまず人気が出ました。
ラジオで話題になると、今度はレイトナイト・ショーというアメリカの有名なトークショーに呼ばれました。それが年末で、年明けには700万枚シングルが売れました。
金子 そうなるとなぜラジオでヘビーローテーションされたか気になります。
後藤 そこがマックルモアーの賢いところなんですね。インディーミュージシャンがなぜ全国区のラジオにヘビーローテーションされたか。
原盤の権利は自分のレーベルが持っているんですが、実は曲の売り上げの一部をメジャーレーベルのワーナー・ブラザース・レコードに支払う特殊な契約を結んでおり、ワーナーのラジオプロモーション部門が積極的にプロモーションをかけていたんです。
金子 ラジオプロモーションをメジャーにやってもらってるんですね・・。
後藤 今は契約の仕方は二種類しかないと言われていて、その一つが360度契約。全部まとめてメジャーにやってもらう。マドンナなどのアリーナツアーしかやらないミュージシャンはこっちの方が都合良い。
インディーとしては、CDが売れない時代に丸ごと権利を持ってかれると困ります。そこでメジャーを使う一番のメリットはディストリビュートとプロモーションなので、それだけ契約するのが良いんですよね。
金子 それは逆にメジャーレーベルからすると何がメリットになるんでしょうか。
後藤 権利で稼げないけど物売りで稼ぐってことになりますね。あとはそういう契約にしないとメジャー契約を切る人もいるので。
それにインディーだとディストリビュートとプロモーションやCMはメジャー規模ではやれないですからね。
金子 マックルモアーのレーベルはメジャーの傘下なんでしょうか。
後藤 レーベルに資本関係はないんですが、マックルモアーはSONYやWarnerのメジャーレーベルのアーティストリストにも名前が出ているくらいで、全く無関係ではないんです。結局、売れたきっかけはラジオです。アメリカはラジオきっかけが多いです。
プロモーションはマックルモアー本人がやっていたと思われてましたけど最初からラジオプロモーション契約はワーナーとしてたんですよね。
そして世に出てしまえばラッパーですから人前に出て盛り上げるのはお手の物。インディーでありながらメジャーをうまく使って活動しているアーティストの代表例ですね。
CD Babyの講習会
日時:2017年12月9日(土)開場13:15 / 開始13:30~16:30
場所:長野県安曇野市 穂高交流学習センター「みらい」、グループ研究室
定員:15名程度
参加費:無料参加希望の方は上記会場へ直接お越し下さい
「インディミュージシャンのためのライセンシング講座(上級編)」
CD Babyの担当者が海外のインディミュージシャンにとって重要な収入源として確立しつつある同期ライセンスについて説明します。初級編あるいは中級編を受講されていない方が参加された場合は、その内容を簡単におさらいしてからの開始となります。どなたでも歓迎いたします。
そのほか、cdbaby.comを使った全世界に対するCDの販売やiTunes、Amazon MP3、Google Play Music、Spotifyなどでのデジタル販売、海外の音楽業界事情やSNSを使ったプロモーションについての疑問などについても可能な限り回答いたします。
講習会がキャンセルになる場合は、https://www.facebook.com/cdbabyjapan/に掲載しますので、直前に必ずチェックしてください。
世界最大のインディーズのディストリビューター
この記事で紹介したアーティスト:
Macklemore
Bendor Llc (2017-09-22)
売り上げランキング: 11,874
この記事を書いた人:
金子将昭(ジャズピアニスト)
http://www.masaaki-kaneko.com/
1982年富山県生。洗足学園音楽大学音楽学部ジャズ科ピアノ専攻卒。大学にギター科で入学。その後、経験無しのピアノ始め二年次よりジャズピアノ科へ転専攻。サポート仕事と和風なジャズを演奏する自己の音楽活動と並行しながら、音楽と社会をつなげるメディア「Circle」編集長、(同) 前衛無言禅師 代表、ジャズアイドル「JiPP」のプロデュース、東京音楽理論研究大学主催、劇団あーてぃすとら主催、音楽アプリ「lepot」のプロデュース、アーティストや劇団への楽曲提供、フリーランス向けの確定申告サイト運営など多岐に渡る。「百人一首曲付けプロジェクト」とジャズスタンダードをトーク・演奏で楽しむジャズスタンダードちゃんねるをYOUTUBEチャンネルにて更新中。
たーまん(カメラマン)
会社員をしながらイベンターや番組プロデューサー、甘酒推進家、ジャズアイドルJiPPのマネージャーなどとしてもマルチに活動。座右の銘は「おもしろいは正義」
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