【対談 その5】「葬送音楽と90年代生まれが求めるお寺とは」内藤理恵子(宗教学者)

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ジャズも宗教音楽要素を吸収して進化していった。そんな宗教と関連あるジャズの話題と今時の悟り世代の若者がもつ宗教感覚の話 (構成/原田和真(脚本家))

 

 前回の対談 金子将昭×内藤理恵子(4)

 

◎  葬送と音楽〜葬送音楽とは?〜

内藤 なるほど。そういえばアフリカのお葬式の音楽を動画で見たことあるんですけど明るい感じでした

金子 あ、それも聞こうと思ってたんだ。『聖者の行進』ってお葬式の音楽じゃないですか

内藤 そうなんですね

金子 あ、はい。ちょっと年代詳しく覚えてないんですけど、ディキシーとかで、葬式は最初はしっとりやるけど、最期は送り出す時は明るくしようってことであの曲がよく演奏されたって話しを聞いたことがあって。

それで僕、以前に一度『お葬式でジャズ演奏して下さい』って言われた時にそれを思い出して聖者の行進を弾いたんですよね。最後なんかカッコイイ車で送り出す時に。

内藤 霊柩車ですね

金子 そうだ!霊柩車で。海外に行った人とかに聞いたら、海外ではそういう風に明るい曲を演奏するのは別におかしい事じゃないよね~みたいな話しを言ってたんで。

僕も最初『お葬式でジャズ演奏して下さい』って言われた時に『いいの?』とかって思っちゃって、僕の感覚だと

内藤 ですよね 

金子 でもその時はヨーロッパで活躍する美術家の人で、その人がジャズ好きで、リクエストが来たみたいなんですよね。待合室みたいなところでずっと演奏してて、そこは何も決めずバラードとかにこだわらず普通のジャズをただ演奏したことありましたね。

 

◎最近の若者への考察~1990年代生まれが求めるお寺とは~

内藤 今の若者って一般的にも『悟り世代』って言われているじゃないですか?

金子 悟りなのか、欲がないのか…

内藤 その今の10代に教えたりしてるんですよ、大学の非常勤講師として。それで思うんですけど、現在の10代は『お寺でコンサート』とか奇抜な住職とかロックンロール住職みたいな存在がウケていないんですよね

金子 あ、そうなんですか

内藤 なんかこう、ウケてるのはうちら世代(ロスジェネやサブカルこじらせ)で、その『悟り世代』って言われる1990年代生まれの子達は『古き良き日本のお寺が静かであって欲しい』とか、『落ち着いていて欲しい』っていう要望の方が多く聞くんですよね

金子 ふんふん

内藤 だからその…。対談の冒頭で出てきたジャズと仏教のコラボは『ジャズのフィールド』でやるべきだと思うんですよね

金子 なるほど

内藤 若い人の中には『仏教のフィールドは清く掃き清められているべし』みたいな保守的な雰囲気があって。今の世代って結構保守的な考えを持つ子がいて、我々世代よりもずっとずっと落ち着いているんですよね

金子 若い人の保守的って、”今のままでいいよ”っていう感じの保守的なんですかね?

内藤 いや、むしろ、もう一周回った感じで。もう下手したら小学校二年生くらいからインターネットを使い始めたみたいな人もいて、だから博識なんですよね

金子 なるほど

内藤 大人よりもずっと情報を持っていて、あらゆる事を調べて知っていて裏の情報まで検索する、その上で何が大切かってことを見極めていく。だからギャップを狙うとかそういうミーハーな売り方ってのは全然効いてない感じがするんですよね。日本の寺の良さとはとかを真剣に考えたりとか…

金子 でも良い流れですね、それ

内藤 お寺はお寺で古き良きお寺に回帰して、コラボはジャズとか音楽の畑でやるっていうので、そこらへんをはき違えない方が良いような気がします 

金子 なるほど。現状確かに分かんないことすぐ調べたり、分からないワードあったらタップすれば意味が出てきたりしちゃいますもんね~。僕、本読んでて分からない言葉あったら、たまに(その本を)触りそうになりますもん(笑)

内藤 (笑) その感覚がもう生まれつきあるってことですもんね。デジタルネイティブってやつですね

金子 そうですね

内藤 若い世代には、書籍はネットには載ってない情報が載ってるから書籍の方にも目を通すようにっていう道筋を立てるために結構頑張ってるんですけど。

金子 あ、そうなんですか?

内藤 ネットにブログを書いたりするけど、ここはこの本に載ってて、本も読んだ方が良いよみたいな。書籍へのチュートリアル的な役割を私のブログで果たせたらいいなって思っています。やっぱりアナログの本ってネットに載ってない情報ありますよね

金子 そうですね。僕は結構デバイスで区切っちゃったりしますけど。じゃあ結構本大好き派なんですね?

内藤 はい。もし全ての情報源がネットになっちゃっていたら、それはマズいなって思います

金子 なるほどね~。というわけでまだ途中なんですが、そろそろ時間ということで。また是非やりましょう。本日はありがとうございました。

内藤 ありがとうございました。

 

記事構成/原田和真)

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kanekomasaaki

金子将昭  Masaaki Kaneko http://www.masaaki-kaneko.com/

1982年富山県生。洗足学園音楽大学音楽学部ジャズ科ピアノ専攻卒。

大学にギター科で入学後、19歳を目前に経験ゼロのピアノを弾くことを決意し、二年次よりジャズピアノ科へ転専攻。卒業後ピアニストとして自己のバンドなどで活動する。

サポート仕事と和風なジャズを演奏する自己の音楽活動と並行しながら、日本初の音楽理論Webマガジン「サークル」編集長、合同会社 前衛無言禅師(ぜんえいむごんぜんじ) 代表社員、東京音楽理論研究大学主催、劇団を作ろうプロジェクトにて劇団運営、音楽共有アプリ「lepot」の開発、ミュージシャンシェアリング企画「1A1L(ワンエーワンエル)」プロジェクト推進、フリーランス向けの確定申告サイト運営など多岐に渡る。現在、百人一首曲付けプロジェクトをYOUTUBEにて公開。「百人一首曲付けプロジェクト」で検索。

 

naitou rieko 
内藤理恵子 Rieko Naito
 1979年生まれ。宗教学者。著書に『現代日本の葬送文化』(岩田書院)、『必修科目 鷹の爪』(プレビジョン)など。
 
 
haradakazuma
対談構成担当 原田和真(はらだかずま)
脚本家。1988年生まれ。北海道出身。大学から山形へ移住、お笑いや演劇の活動を始める。漫才、コント、演劇、アクション、音楽とのコラボ、ラジオドラマなど様々に挑戦し、手段を問わず”エンターテイメント”を追求する。2014年4月に活動を東京へ移す。
 
現在の欲望:映画の脚本をやりたい。マジシャンの仲間が欲しい事。
現在の所属:劇団あーてぃすとら、ラフィクション(お笑いユニット)
 
 

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