【対談】「音楽理論と美意識」ゲスト:ジャズベーシスト川本悠自

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音楽理論が好きな人と一緒に音楽理論について深く浅く話す企画、ジャズピアニスト金子将昭の対談シリーズ『音楽理論な人』

第1回目はインタビューコーナーにも出演していただきましたジャズベーシスト川本悠自さん。音楽理論といえばダイアトニックコードやディグリーネームを駆使した分析やコンティギュアスドミナントやディセプティブリゾルーションなんかの理論の話がでるかと思いきや、まったくでない音楽理論の別の側面の美意識の話。

 

 

世界の秩序を体系化した音楽理論という美意識             

金子 音楽理論って、例えば調性がFの時にF#M7を鳴らすとこんな響きがしますよって事をディグリーネームやコードで表してる、それが便利って側面もあると思うんですけど、音楽理論ってもっと別な顔も持っていますよね。

 

バークリーメソッドはポップな人気者、中心軸システムは理の拘り、リディアンクロマチックコンセプトは宗教観など。その中で『リディアンクロマチックコンセプト』ってどう捉えていますか?

 

川本 難しいよね、いきなり(笑)僕はある種の西洋哲学の美意識みたいなものを感じるんですよ。スケールの音が7つであるとか、8つで1オクターブになるとか、4小節や8小節でひとくくりであるとか。

 

音楽における計算されている組織体系の中で、ある一つの密度をどの程度までの割合で配置するかというものを表す数学的美意識を感じますね。まるで世界の秩序を解き明かすような。その辺りまでたどり着く美意識ってやはり哲学的な香りはしますね。それがリディアンクロマチックコンセプトにも感じるんですよね。 

 

1オクターブを半分に割らないっていうのは、単純にフェチでしょ(笑)それがバランスがいいんだっていう美意識ですよね。

 

金子 ピアノの鍵盤や和音なんかにも黄金比率やフィボナッチ数列がでてきまくりますからね。確かにこれはある種の美意識が音楽に投影されているからかもしれないですよね。

 

川本 その美意識やバランスがいいんだっていう正当性の説明のために、我々はどこからやってきた?っていう話に遡るような気がするんですよね。

 

長年の積み上げられてきたものがある中で、それらがなぜそうなったのか?って遡って調べて考えるとやはり行き着くところは我々はどこからやってきた?です。

 

金子 日本人で言えば、昔は照葉樹林があって木の実などが豊富にとれてタンパク質など効率的にとれたと。そこで自然を神様として祀りまた木の実がたくさんとれるように多神教とも言える神道などがあったように、逆に天候や食べ物に恵まれない痩せた土地などはその厳しさを一神教の神の怒りとしたと。

 

その土地でご先祖様が何万年も生きてきた環境の中で形成されていった感覚がその音楽理論の成立に少なからず関与しているという事ですね。

 

川本 そうだね。音楽理論をなぜそうなった?って考えて行くとそこに行き着いてしまうと思いますね。そして次に誰かがこの世界はどのようにできたんだろう?と考えた時に哲学などがでてきて、これが世の中の仕組みなんだと、美しいあり方なんだと。そこに影響を受けながら則して音楽は成り立っていってきたんじゃないかと思うわけですよ。

 

金子 昔のある国の人は地球はでっかい像の上に乗っているんだよって真面目に考えてた人達もいたらしいですからね。

 

そういった様々な所からの哲学などの美意識が色々推敲淘汰され5度の響きは悪魔が来るとかといった音楽的表現、そしてそれが音楽理論になったのかもしれないですね。

 

 

『リディアンクロマチックコンセプト』の表現したかった事                  

川本 つまり音楽理論って世界の仕組みのバランスを紐解いて黄金比みたいなものを導きだして、このバランスで作り上げると僕たちにとってバランス良く作れるでしょっていう方法論ですよね。

 

なのでそれはその人達固有の美意識なんじゃないかな。リディアンクロマチックコンセプトや音楽理論を理解するときはそういった事まで考えないと理解できないんじゃないかな。

 

金子 人類がどのように生きてきたかとか・・。

 

川本 そうそう。ジョージラッセルが考えた事ってそういう事と思うし、それを理解しようと思ったら人類がどう生きてきたかって事まで理解しないと難しいんじゃないかな〜。

 

金子 僕は日本語訳を読んだんですが、実際本にもそういった内容に近い事が書かれていますよね。宗教観や全ての人々が幸せになるようにという。

 

「イオニアンスケールはどこかゴールに向かいたがっている音である。だからそこに競争や戦争が生まれるんだ。一方でリディアンスケールはどこにも向かわない、何も望まない、ただそこにある。これが世界の平和だ。その証拠にイオニアンスケールを5度音程で積んでいくと音がぶつかりどこかへ解決、向いたがっているがリディアンスケールはそれがない。透明な美しい秩序だ。」

 

これ僕の解釈ですけどね(笑)。アドリブする時はそんな事考えずいつもお世話になっております(笑)

 

川本 (笑)まぁ、そういった宗教観からは逃れられないよね。我々ミュージシャンの中でもオカルトに捉える人もいるじゃない。やっぱそれくらいのインパクトのあるものってことで、そのインパクトってやはり正しいものなんじゃないかな。

 

そしてバークリーメソッドにもある種そんなものも含まれているんじゃないかなと思うし、これから東京音楽理論研究大学でシリンガーシステムについて研究するんですが、そのような美意識があって欲しいなって思ってます(笑)。

 

金子 あ、宣伝ありがとうございます(笑)東京音楽理論研究大学よろしくです。。えーと、・・バークリーメソッドにもそのようなものを感じるって珍しい意見ですね。僕はバークリーメソッドを使っているとポップな人気者な感じがどうしてもしちゃうんですよね。

 

 

皆が使う一つの音楽理論から個人の音楽理論へ             

川本 バークリーメソッドはガーシュウィンみたいな流行歌の作曲家達がより効果的に大衆に耳なじみ良い音楽を作り出すためにはどのようにしたらよいかっていうニーズに答えた理論でしょ。

 

金子 ローレンスバークがシリンガーシステムを手直してバークリーメソッドになった時そういった背景もあったのかもしれないですね。

 

バークリーメソッドって理論が進むとノンファンクションコードや旋律をアウトフレーズにして分けるけど、リディアンクロマチックコンセプトはアウトゴーイングと言葉は使うけどどこかインとしてのニュアンスを感じますしね。どんな音でも使えるっていう。

 

ここに世界には不必要なものはないっていう美意識が(笑)。

 

川本 リディアンクロマチックコンセプトにはやはり美意識や哲学はあるんだけど、バークリーメソッドはある種の時代が求めた必要性によってできた理論だから美意識よりは便利で扱いやすいってことの方が重要なんだと思うよ。 

 

金子 バークリメソッドには人気者になる匂いがプンプンしますもんね。

 

川本 パズル的な要素とかね。

 

金子 そうそう。つじつま合うとなんかやったー!って気になる(笑)

 

川本 でも『結局なんで?』っていう質問を3回くらい繰り返すとバークリメソッドって答えられなくなるじゃない。

 

金子 あーなるほど。それで結局倍音列に根拠を求めると。

 

川本 そうなるともうそれはバークリメソッドってよりかはクラシック理論だし。

 

金子 なるほど。便利な理論といえば川本さんてバルトークの中心軸システム好きですよね(笑)。

 

川本 あ、あれね(笑)。あれは好き(笑)。あれなんなの?あれもっと勉強したいんだよね。

 

金子 なんか大味なO型な理論ですよね(笑)ルートが等間隔で同じならコードタイプに限らず入れ替えることができるっていう。A型ではこうはならないですよね(笑)。

 

川本 まぁでも、同じ理論をみんなが使っても違うから面白いのであるし、逆に色んなのを使ってもみんな似ているのにも問題はあるよね。

 

金子 それはそうですね。やはり今の音楽理論を基礎に自分の音楽理論を作り上げ、それでオリジナル曲を作るっていうのは本当はごく自然なことですよね。そういったものをこのサイトでみんな紹介してくれれば面白いのにな(笑)。

 

川本 それは面白いね(笑)。やろう(笑)

 

金子 今の時代は自分の曲だけではなく理論も作って広がっていけば音楽理論もまた新たな方向を見つけて行きそうですよね。ジャズに限らず色んな人の理論。

 

前にビブラフォンの中島さんが言ってた、『半音あがる時はマイナーが美しい』とか。そうゆうのってその人しかない美意識とか理論のスタートみたいな気がするんですよね。

 

川本 そうですよね。今はバークリメソッドを美意識のレベルまでに高めている人がいるかもしれないしね。

 

金子 その人はきっとA型ですね(笑)

 

川本 わからないけど(笑)。

 

金子 音楽理論と美意識と血液型って実は密接なものだったのかもしれないですね(笑)。僕はO型だし中心軸システムもまた久々にやってみようかな(笑)

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img07金子将昭  Masaaki Kaneko

1982年富山県生。ジャズピアニスト。合同会社前衛無言禅師代表社員。洗足学園音楽大学音楽学部ジャズ科ピアノ専攻卒業。

大学時にギター専攻で入学したが2年次よりピアノ科へ転専攻し19歳よりピアノを始める。

堂本光一、大橋卓弥(スキマスイッチ)、imalu、ジョナサン・カッツ、類家心平、マークトゥリアン、フレッドシモンズとのセッションライブやバンドサポート、ミュージカルなどでピアノを担当。

ミュージシャンによる音楽理論研究会『東京音楽理論研究大学』を主催。

 

 

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川本悠自   Kawamoto Yuji

1978年千葉生。高校よりエレキベースを始め、立命館大学ジャズ研でウッドベースを始める。1999年京都大学Dark Blue New Sounds Orchestraに所属し山野楽器ビックバンドジャズコンテストで優秀賞受賞。

2001年頃より都内近郊のジャズクラブ等で活動を始める。2007年アカペラカルテット「XUXU」と共作アルバム「アカペラ協奏曲第1番作品23」を発表。これまでにサックス奏者山口真文氏、ドラム奏者ジョージ大塚氏、ピアニスト辛島文雄氏などのバンドに参加。その他俳優の渡辺えり氏、三宅裕司氏のライブサポートやコンテンポラリー ダンサー山田うん氏とのコラボレーションなど活動は多岐にわたる。

現在は自らのグループで自己の音楽を追求するかたわら銀座七丁目にあるアートスペース 「スペースにはたづみ」の運営に携わり新しい芸術の発信方法を模索している。 

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