【対談 その2】「これから必要なのはジャズのようにその場を即興で判断すること」寺内克久(不定調性論)

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音楽理論対談(2)「金子将昭×寺内克久」音楽理論と社会

音楽理論対談(1)

 

金子:それはどういったものなんですか?

 

寺内:いろんなケースを教材に反映させましたが、例えば、某企業の社長さんなんですが、とにかく毎年二回ライブを欠かさない精力的な方で、新曲を作ってきて「メジャーコードを適当に並べたら、なんかいい感じになったんだ、(私は)作曲分からないんで良いのか悪いのか分かんないけど、好きな展開なんだよ。」て言うんです。で、見てみると、ビートルズみたいなコード進行で。イメージ涌きます?

 

金子:ヘイジュードの最後みたいな感じですかね。似ている曲あればこっそり教えてください。笑

 

寺内:詳しくはブログで笑 !もちろん音楽的素養がある方なんですけどね。不定調性論では同じコードタイプを使って作曲する方法を「和声単位作曲技法」って呼んでるんです。「コードから曲を作る」ってよくある手法を、ちゃんと技法化したんです。 名前があると「私の作曲法はそれだ!」なんて言ってくれるんですよ(笑)。

 

自由に作るっていうのは、どこか既存の楽理を無視するわけで、そうすると「これでいいのかな?」って思って作業が進まなくなる。自分なりに作ったのに、奇異なものに見えるんですね。そういうポピュラー楽理の隙間を埋めるような、クリエイターの”自由”を後押しするような技法集としての不定調性論の利用価値を再確認させてもらっています。とにかくとことん自由を求めていろんな話まで突っ込みましたね。「負の音」なんて考え方も書いてますし。

 

金子:カテゴライズは物事を整理する上で便利ですからね。それが良いか悪いかより俺流構築が目的であるならば名前くらいつけてしまおうという事ですね。

 

寺内:変に名前を付け て煩雑にはしたくないですけどね。

 

金子:僕はこの雑誌の連載で音階のことを「ドレミファソラシド」と表現してるんですけど、繰り返すと逆にわかりにくいんですよね。「これはドレミファソラシドを使って作られた和音なのでドレミファソラシドを使ってメロディーを作れます。なぜかというとドレミファソラシドで・・・」みたいな。音階の説明を最初にすれば良かったなと(笑)。なので適度な名前付けは歓迎です(笑)。

 

寺内:先ほどの、和声論と会社組織の話に戻りますが、金子さんから以前その話伺ったときも妙に納得だったんですが、実際考えるのはこれからだと思います。でも、なんだか凄く実用的な話になりそうで嬉しいですね。金子さんのほうが何かピンと来るところがありそうですね、和声論と会社組織というような視点について。

 

金子:こういった飛躍しすぎる話をすると非難の対象になりそうで嫌なんですが(笑)。でも寺内さんは話をしっかり聞いてくれて非常にうれしかったです。和声論と会社組織っていうのはポップな表現なんですが実用的なものに変えて行くのは応用ですね。

 

寺内:その話、凄そうだ!

 

金子:まだ手探りですが・・・笑。例えば将棋がクローズアップされている背景にはただ将棋が強い人って事だけではなく「将棋=先を見通す力」みたいな捉え方がされている反面もあると思います。これは個々人の解釈で良いと思いますが、そういった応用を音楽、特にジャズといったアドリブや即興を伴うものや音楽理論などにも可能性があるなと感じていますね。

例えばリッツカールトンホテルの日本支社の社長の高野登さんの「リッツカールトンホテルが大切にするサービスを超える瞬間」という本で「ホテルマンはジャズミュージシャンでなければいけない」というのが書いてあって、マニュアル通りに動くのではなくジャズミュージシャンみたいに即興でその場で判断して行動しなければいけないといういっています。

 

寺内:そういう発展的な話題、不定調性でも書きましたね。ページ数が多くて開かないと覚えてないんですが。

 

金子:mixiとかでも書かれてましたよね。読ませていただきました。不定調性論に出てきますがCとEbにはどちらもソが入ってますが各基音をベースにすると周波数は同じではない。同じソなのに違うという現象がありますよね。

人はソというレイヤー構造をもっていたとしてそれはCにもEbにもなれるんですよね。Cの中のソが正しいわけでもないしEbもソが正しいわけでもない。人は自分っていうものでありながら同時にいろんなものに関われて溶け込んでいるんですよね。

今後はミュージシャンも副業持つ事が当たり前になってくると思いますし「レジーのブログ」で「音楽で食わずに、音楽と生きる」というエントリーとかありますが現代のあり方の一つかなと。レッスンをしていても良いしライターをしていても良い。サラリーマンだって良いですよね。全部ソというレイヤーでつながっている自分ですよね。

 

寺内:良いお話なので、一つ深めに説明させて頂くと、平均律は12音しかないですよね。でも自然界には無数の音程があるわけです。これをどうやったら12音で表現できるか、というと、和声の組み合わせだ、と不定調性論では書いているんです。

先ほどの「ソの音の話」はそういうことです。これを人に当てはめると、同じソでも組織が変われば輝きや特性も変わるってことです。12音平均律はそうやって、12個の個性を組み合わせて、12音以上になる方法を発明して無限の可能性を持つ音楽という表現文化を作ったと思います。つまり和声はそのためにあるんだ、という発想で不定調性論を展開させています。ここから「和声単位」とか「和声の領域論」とかが出てくるんです。

 

金子:その辺りの記述は僕も目から鱗でそういった捉え方は非常に興味深く感じました。そういった構造から今の時代の人のあり方っていうのが見えるんじゃないかなと思いますね。「こうでなければならない」というのは無いので。

音楽理論も時代によってはなかなか受け入れられてこなかったものあったと思うんです。リディクロなんかは一部熱狂的な(私もですが・・)人には受け入れられてきましたが現在は主流はバークリーメソッドです。

しかし今後はこういった俺流を作るという目的をもった人達の独自の音楽理論が増えてある程度の市民権を得て、さらに自分に最適を要素を吸収してまた新たなものを生み出すといった構造が出来上がってくるように思います。というか不定調性論がもはやその走りだと思っています。

 

寺内:ありがとうございます。パットマルティーノの「マイナーコンバージョン」やアラン・ホールズワースの「ハーモナイズシステム」を彼らの視点で説明したら各提唱者の視点や用語が混ざってごっちゃになるんですよね。

だから私のレッスンでは、全部不定調性という一つの視点から伝え、提案し、そこからディスカッションして受講生の考えがどこに落ち着くかちゃんと見定めます。不定調性論がその人の答えになるんじゃなくてその人のやり方を一緒に構築する感じです。

 

金子:個に合わせた教育ですね。同感です。30年前の大学・就職・結婚という決まった社会構造の中ではマイノリティになっていた音楽理論も、一人の人間が様々な要素をもつ時代にこそ歓迎されるのではないかと思いますね。私がまずそうですし。そうした背景に伴って新しい音楽理論が生まれてくるのではないかなと。そしてそういったマイノリティが増えて受け入れられる時代だからこそそこに音楽や音楽理論と社会を合わせたいという思いはありますね。

 

寺内:たしかにこうした不定調性のような見方がインターネット上で存在していられるのも、ユーザーの皆さんそれぞれが多様性を認め、多くの情報に対応できる社会構造ができたからかもしれませんね。

 

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金子将昭  Masaaki Kaneko http://www.masaaki-kaneko.com/

1982年富山県生。洗足学園音楽大学音楽学部ジャズ科ピアノ専攻卒。

大学にギター科で入学後、19歳を目前に経験ゼロのピアノを弾くことを決意し、二年次よりジャズピアノ科へ転専攻。卒業後ピアニストとして自己のバンドなどで活動する。今まで堂本光一、大橋卓弥(スキマスイッチ)、imalu、ジョナサン・カッツ、類家心平、マークトゥリアン、フレッドシモンズとのセッションライブやバンドサポート、ミュージカルなどでピアノを担当。

サポート仕事と和風なジャズを演奏する自己の音楽活動と並行しながら、日本初の音楽理論Webマガジン「サークル」編集長、合同会社 前衛無言禅師(ぜんえいむごんぜんじ) 代表社員、東京音楽理論研究大学主催、音楽共有アプリ「We Compo」の開発、ミュージシャンシェアリング企画「1A1L(ワンエーワンエル)」プロジェクト推進、フリーランス向けの確定申告サイト運営など多岐に渡る。

 

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寺内克久  Katsuhisa Terauchi
 
大学卒業後専門学校にてジャズ理論を学びながら作曲/演奏活動、作曲家としてデビュー後大、手音楽専門校へ就職。その後music school M-Bank発足と同時に、経営/運営スタッフとして、またギター・ウクレレ・ベース・作曲・DTMの講師として活動。
 
最先端のポピュラー/ジャズ和声学を目指し『不定調性論』を提唱し、レッスンでの活用、各方面での研究発表を行いながら、実践的で個性を活かす音楽レッスンカリキュラムのコンサルタントとしても活躍中。日本音楽理論研究会幹事。日本リズム協会会員。毎週250kmを乗る、ロードバイカー。M-Bankの通信講座ブログ , 不定調性教材のお申し込みはこちらから
 
 

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