音程、といっても、ピッチのことではない。インターバルのことだ。
外声を司る楽器、ほぼ全ての楽器は外声を司りますが、において、最も重要なことは、外声における音程感だ。
音程には12種類ある。
完全一度から長七度まで。完全一度、短二度、長二度、短三度、長三度、完全四度、増四度、完全五度、短六度、長六度、短七度、長七度。
これらの音程を操ってルート音との適度な緊張感と弛緩を作っていくのだ。
ある程度の既成のフレーズは、音程的にも完成された美しい流れを持つものが多い。
そういったものをなぞっている分に於いては、そこまで意識しなくても、インスタントにではあるが、そこそこいい音程の演奏をすることが出来る。
ところが、コード感から外れていくような演奏や、完全無調の演奏や、インプロヴィゼーションの世界に突入したら、そこはなんでもありの世界。音程感を意識出来るかどうかがとても重要になってくる。
音程を三種類に分類してみた。
安定音程、通常音程、緊張音程だ。
安定音程 完全一度、完全四度、完全五度
通常音程 短三度、長三度、短六度、長六度
緊張音程 短二度、長二度、増四度、長短七度
まず最初に避けなければならないのは、安定音程を唐突に演奏の中で出すことだ。
つまり、ルート音に対して安定音程を軸としたフレージングは避けなければならない。
非常に平べったい音楽になってしまう。安定音程は、音楽が安定したときに意味を成す。例えば完全に終わりのシーンであるとか、音楽の中での半終止的な意味合いを持たせたいとき等。それ以外は避けた方がよい音程。
逆に、トップのメロディーを司る楽器の人の音楽のベクトルが、次安定音程を軸としたフレージングを目指しているように感じた時は、ボトムのメロディーを司っている楽器は、その音程の行き先を予測、先回りして通常音程や緊張音程を保つようなラインを構築していく。
ところが、多くのベーシストは、平気で完全8度をぶつけて来たりする。メロディーの行き着く先を予想していない、というよりも、より良い音程をトップの音と構築していく、という概念が欠落している。
僕は趣味レベルでですが、ベースを演奏することがある。その時に、つまらなさを感じる共演者は大概音程が悪い。安定音程を基軸としたメロディー構成をしているのだ。
音程感について、考えてみたこともないプレイヤーは、予想外に多い。
音程感は、フレーズを覚えることよりも遥かに重要なことなのだ。
フレーズを紡ぐというよりは、より良い、よりふさわしく即した音程を構築していく、紡いでいく、といった感覚をもつことが重要なのだ。
そして更に高いレベルのことを言うと、完全1度と完全8度は厳密に言えば違う。
僕の中で音程、というか、音世界は、張り巡らされた蜘蛛の巣のようにその中心からの距離感を持っている。それはペンタトニックとコンビネーションディミニッシュのような秩序的な音の羅列により、模様づけられている。
中心との距離は永遠に変化し続けていく。離れていくことが可能なのだ。15thというテンションは存在する。
そのような音感覚を共有して、即興的に音を紡いでいける共演者は数少ない。
この記事は中村真さんのブログ「 中村の考え」の2012年11月10日の記事「音程感について」より転載させて頂きました。
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中村真 ジャズピアニスト website
ブログ「 中村の考え」
1972年1月14日大阪府豊中市生まれ。邦楽家の父の影響で幼少の頃より音楽に親しみ、4歳からピアノを始める。
高校時代よりジャズに傾倒し、独学でジャズピアノを学ぶ。大阪音楽大学音楽学部作曲学科にて作曲を学ぶ。在学中よりプロ活動を開始し、関西を中心とした音楽活動を展開、2000年自転車で上京。川嶋哲郎「Cresta」、eweのコンピレーションアルバム「TOKYO RAMA」、石崎忍「Timeless Affair」、Ya!3「Loco」TOKU「30」等のアルバムにも参加。また韓国のトップジャズサックス奏者であるチョン・ソンジョとはアルバムを2枚制作。日本でも発売される。綾戸智恵のコンサートツアーにも参加。東京国際フォーラムでのコンサートの模様はDVD化されている。
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