【ゼロからの楽典入門】まずはじめに(2)
この章は理解するよりはなんとなく「へー、こんなもんなんだぁ」と思って頂ければ大丈夫です。覚えたりする必要はありません。まだ分からない事があっても先へ読み進んで実際の楽典に入っていただければと思います。
2:音律
2.1 : 音律とは
音楽で使う音の高さ(音高)はある一定の規定によって決められる。その規定を「音律(おんりつ)」という。
つまり各音にどのような音高を与えるかが音律の重要な役割である。現代の音楽で幅広く使われている音律は「平均律(へいきんりつ)」という音律である。
1オクターブを12個に分割して平均的に音高を与えるので「十二平均律(じゅうにへいきんりつ)」とも言われる。
音律には様々なものがある。歴史上において様々なものが試されてきた。下記に代表的なものを記載する。
・ピタゴラス音律
・純正律(じゅんせいりつ)
・中全律(ちゅうぜんりつ)
・平均律
ここでは「純正律」と「平均率」について述べることにする。
純正律とは、「純正音程(じゅんせいおんてい)」によって作られる音律である。
純正音程とは、音の振動数が簡単な比になっているものである。西洋では簡単な数比になっているものほど協和して聞こえると言われていた。
振動数の比とは・・・
ここに一本の弦がありそれを弾くと音が鳴るとする。その長さを半分(1/2)にしても音がでる。そして元の長さの1/3の長さにしても音がでる。このように音を簡単な数字から考えて作ったものを純正音程という。ちなみに元の音が「ド」の場合「半分の長さにしてできた音」は「高いド」であり、「2/3の長さにして出た音」は「ソ」にあたる。
以下に純正律の比を示しておく。(カッコは隣同士の音の振動数比)
ド:1/1
(9/8)
レ:9/8
(10/9)
ミ:5/4
(16/15)
ファ:4/3
(9/8)
ソ:3/2
(10/9)
ラ:5/3
(9/8)
シ:15/8
(16/15)
高い方のド:2/1
純正律の決定と利点は以下である。
利点:他の音律に比べて美しく響かせる事が出来る。
「ドミソ」や「ファラド」や「ソシレ」の長三和音を弾くと4:5:6の振動数比からなる和音ができる。純正音程で出来上がっているため美しい響きが得られる。
欠点:特定の音にしか純正音程が得られない。また、全音が2種類ある事により旋律を奏でる場合は不均等に感じる。
「ド」と「ソ」の完全五度(後述)の場合は3/2 の純正音程を得られるが、同じ完全五度である「レ」と「ラ」は40/27となり純正音程にはならない。このように純正律で別の和音を弾くとすると純正音程が得られないという欠点がある。また全音(後述)が9/8と10/9の2種類でき旋律を弾くときに不均等な印象を与えてしまう。
純正律の欠点を解消したものが平均律である。
一オクターブを12個の音に均等に配分したものである。
平均律は純正律にあった「特定の音のみの美しさ」を少しだけ減らす事により、他の音も同じような響きになるように調整し、全ての音の響きを平均的になるようにした。
現在ではこの平均律が圧倒的なシェアを占めている。
平均律の利点と欠点は以下である。
利点:
どんな長調や短調でも均質な響きを得られることや移調や転調などが容易である事
欠点:
各音は1オクターブを12等分したものなので振動数は12√2=1.0594630となり純正音程のような2/3のような響きを得られない。つまりどの音を演奏しても完全な美しい響きは得られない事になる。
純正音程のような協和の響きは得られないが、不協和の度合いがわずかであり12音全て均等に使用できるという利点が圧倒的に欠点を上回るため現在において平均律が普及されている。
この楽典は特別指示がない場合以外は平均律を使用して説明をしていくことにする。
金子将昭 Masaaki Kaneko
1982年富山県生。ジャズピアニスト。合同会社前衛無言禅師代表社員。洗足学園音楽大学音楽学部ジャズ科ピアノ専攻卒業。
大学時にギター専攻で入学したが2年次よりピアノ科へ転専攻し19歳よりピアノを始める。
大橋卓弥(スキマスイッチ)、imalu、ジョナサン・カッツ、類家心平、マークトゥリアン、フレッドシモンズとのセッションライブやバンドサポート、ミュージカルなどでピアノを担当。
音楽理論の研究する東京音楽理論研究大学を主催。
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