本連載の予定
第0回 序論
第1回 和声の存在を再確認する
第2回 自然倍音の数理の不思議
第3回 下方倍音列の活用
第4回 数理親和音モデル
第5回 和声単位という和声構築法
第6回 和声の分子構造
第7回 増四度環と裏領域
第8回 調という幽霊を発生させる和声の反応領域
第9回 和声二元論が成り立たない理由
第10回 長調と短調の二極化から旋調性へ
第11回 負の音を作ってみよう
最終回 まとめ~ドミナントモーションから動和音へ
(※進捗によっては、若干のテーマ変更の可能性もございます。ご了承下さい。)
皆さんはじめまして、music school M-Bankの寺内克久と申します。
ご縁があり、このような場を頂戴しましたので、日本のポピュラー/ジャズ楽理の発展に貢献できるようなテーマから、その先を見据えて皆様にご興味を持って頂けるような記事を書いていきたいと思っています。
どうぞ、宜しくお願い致します。
「不定調性論」とは、私自身が2002年にネット上で公開を始めてから、様々な研究会等で発表をさせて頂き、現音楽スクールにおいてレッスンで使用し、日々改良が重ねられている作曲/編曲/楽理研究の体系です。
これはどういうものか、というと、
1、和声を作り、
2、作った和声をつなぎ、
3、旋律を乗せる。
すなわち楽曲の骨格を作る和声論であり、コード進行概念から音楽を追求したもの、といえます。. . .なんだ、それって「コード進行で曲を作る」ってことでしょ?簡単に言いますと、そういうことです。でもこれ、けっこう奥が深いと思うのです。
たとえば、
C |F |G |C |
※C,F,Gは全てメジャートライアド、「|」は小節線。
というのは、Cメジャーキーの主要三和音による進行ですね。では、これはどうでしょう。
F |G |C |F |
これはGをFメジャーキーのII、ダブルドミナントとかドッペルドミナント等というコードと解釈すると、これはFのキーの進行になっていると言えます。
また、これはどうでしょう。
G |C |F |G |
これは、ビートルズの『A Hard Day’s Night』のAメロです。で、
G |F |C |G |
こうすると、キーは違いますが『Hey Jude』のエンディングの繰り返し部分のコード進行になります。キーはどちらもGです。
Cメジャーキーのスリーコードのはずなのに、こんなに雰囲気の違い、且つキー解釈まで異なる表現ができる、ということに気がつきます。
不定調性論はこれらの可能性をまとめる為に、全素材を一旦フラットにしました。そこから「Xという和音は、どの和音にも進むことができ、それらを作曲者が自身の意味感と言語的意図をもって連鎖させる為に、調的概念を越えて、作曲者の音楽のクオリアを鍛え上げることで可能にする」という目的を具体的な一般化作業を徹底して構築しました。
クオリア<qualia>とは、
“感覚的・主観的な経験にもとづく独特の質感。「秋空の青くすがすがしい感じ」「フルートの音色のような高く澄んだ感じ」など。感覚質。”
~大辞林より~
というものです。
G7→C
を聞いて、これは解決していない、と思え!
というのが、この不定調性論の目的ではありません。
まず、G7とCの根源を知り、このG7がCに<向かった感じ>を自身の中で少しずつ発展させていこう、というわけです。
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