【短期連載】全3回「Vol.3 音楽理論って結局何?」中藤孝二

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全3回「Vol.3 音楽理論って結局何?」

 

1回目

2回目

 

前回の話の一方で、音楽理論なんて生涯無縁な人、あるいは、理解しているし活用もするが、そんなものに縛られながら音楽をしたことなどない、という人たちがいます。彼らは音楽を母国語として修得している、ネイティブ音楽家たちです。

 

ネイティブ音楽家たちは、類稀な才能に恵まれ、幼い時より音楽に囲まれた生活を当たり前とし、楽器の演奏技術に長け、呼吸をするように自然に音楽を奏でる、音楽の国の神様に愛された人々です。そして、英才教育が一般的な音楽の世界には、こういった人種の方々が本当にたくさんいます。

 

彼らにしてみれば音楽理論など、もちろん知らなくても不自由しないし、いったんそれを与えてしまえば、瞬く間に理解し、すぐに発展的な思考さえできるでしょう。 彼らはいかにして音楽を身につけるのか。

言語の問題に置き換えれば理解は簡単です。

私たちが学校で英語を学ぶ時、当然最初にアルファベットを覚えさせられます。しかし、母国語である日本語を修得する時に50音表をまず暗記する赤ちゃんなどいません。 母国語の修得過程と全く同じように、ネイティブ音楽家たちは幼少期に、聞いた音楽をすぐに声や楽器で表現し、音楽に必要な全ての要素を感覚的に瞬発的に会得してしまうのです。

 

対して、我々多くの人間は音楽を外国語として、体系的に理論的に、それこそ音楽のあいうえおであるドレミから学習して行くのです。 したがって、言語にとっての文法にあたる、音楽理論というものが大変に役立つわけでもあるのです。

 

理論自体からは直接話が離れますが、「耳に気持ちいい」ということについて考えてみましょう。 「耳に気持ちいい」とはいったいなんでしょうか。読んで字のごとくとも思いますし、非常に曖昧な表現だとも思います。

ここで一つ例え話をしましょう。 今ここに、料理の全スキルと知識、また膨大なレシピデータを内蔵したロボットがいます。今彼にプログラムにはないオリジナルメニューを彼なりのアレンジで作ってもらう事にします。出来上がった品物はまぁまぁ美味しいものでしょう。ただし、人間の料理人が作ったものに勝つことはおそらくないでしょう。 なぜか。

 

答えは簡単です。それはロボットは自分で料理を食べられないからです。人間の料理人であれば出来上がった料理を味見し、納得のいかないところがなくなるまで何度でも作り直すことができます。

 

完璧なシミュレーションが出来るものというのは、実は世の中ほとんどありません。大抵はシミュレートして出来たものをスタート地点に、実際に生じた問題点を改善しながら完成を目指すのです。 僕は素人ですので良くわかりませんが、一流の料理人の条件として一番大事なものは舌なのではないでしょうか。

 

いい味のイメージが明確にないと、いくら小手先の技術があっても美味しい料理は出来上がりません。 (とここまで語ってきましたが、これは「ロボットは人間と同じ食事を取らない」という一般常識を前提としているため、ロボットに食事用デバイスが導入されればまだ彼に勝機はあります。)

 

例え話が長くなりましたが、要するに音楽も同じということです。ただ闇雲に理論をすり込んだだけのマシーンになってもいい音楽はつくれない。「耳に気持ちいい」音のイメージをしっかりともち、そこへたどり着くために努力をし続けたものだけが、いい音楽に出会えるというわけです。

そして、「耳に気持ちいい」という感覚には当然個人差がありますので、それがつくられる音楽のキャラクターをそのまま決定づけることになります。ただただ自分の純粋な感性を信じ、磨くことが何より重要です。

 

最後にまとめると、音楽理論というものは既存の音楽的自然現象を研究し理論的に解き明かした、いわば科学のようなものであるということ。現象から得られた理論である以上、理論が現象を縮小させるような事は絶対に許されないということ。何よりも優先されるのは個人の感性であり、理論はその補助に過ぎないということ。ということになります。

 


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中藤孝二(なかとうこうじ)

1985年生まれ。立教大学卒業。大学在学中よプロ活動を開始。
中学でロックやブルースギターを始め、その後ジャズやR&Bに傾向。
高校ではクラシックギターも修得する。
ジャズギターを杉本喜代志氏に、クラシックギターを安達常一氏にそれぞれ師事。
現在は自身のリーダーカルテットで精力的に活動する傍ら、ダンスミュージックバンドのGUSHや、ジャズビッグバンドの向井志門 & The Swingin’ Devils のメンバーとしても活躍中。

 

 

 

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