【短期連載】全3回「Vol.2 音楽理論って結局何?」中藤孝二

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「Vol.2 音楽理論って結局何?」

 

前回はこちら!

 

音楽理論のおかげで、現代に生きる私たちが音楽を学習する時、いちいち幾つかの曲を分析しスケールを解き明かすところから始めなくていいわけです。なぜなら教科書の一ページ目にもうその答えがちゃんと書いてあるからです。 続いて、ハモりについても考察して見ましょう。

先ほども見てきたように、どうやらハモりには気持ち良くハモる音と、不快になる音があるようです。ともすると、その気持ち良いと不快を分ける法則性を解き明かすことが音楽理論の使命と言えます。では、始めましょう。


まず、もとのメロディの音をドとします。とりあえずレでハモってみました。うーん、なんかちょっと不安な感じ。次ミ。素晴らしい、とても気持ち良い、きれいなハモり。ファ。さっきより無機質な感じだがこれはこれでありだ。ソ。うん、このハモりも気持ちいい。 というようにただ今ある現象を分析するだけでなく、考えられる可能性を片っ端から当てはめてトライアンドエラーをしていくという手法も考えられます。

 

また、今ハモりの音を試す時、当たり前のようにレからスケールの音を順番に当てはめて行きした。このように、いったん確立された理論は次の新しい理論を導き出す際の前提条件にもなります。とても数学的な世界ですね。

 

ではそもそもなぜ原始的なメロディはスケール内の7音からしか作られないのか、メロディの音の順番はどうやって決まるのか、ハモりに使える音と使えない音があるのはなぜか。

 

これらの問いに理論的な答えはありません。それらはすべて「耳に気持ちいいから」というただ一点の理由によってもたらされた結果に過ぎないのです。そしてその結果がもつ法則性に論理的説明を与えるのが音楽理論の役割であることは既に述べた通りです。

 

大事なのは「耳に気持ちいい」➡︎音楽理論のこの順番です。 音楽理論というものはそれ単体でも大変奥が深く、そして興味深いものですが、それにのめり込むあまり「耳に気持ちいい」という音楽を作る上での最大の価値基準をおろそかにしてしまう危険があります。

 

なんかいい感じの曲が出来たけど理論的におかしいからボツだな、なんてことは絶対にあってはならないことです。いい音楽に理論的な説明がつかないとしたら、それは理論の方が遅れているのであって、決して曲がデタラメだとか崩壊しているということではありません。

 

実際に、過去の歴史を紐解けば、ある天才の革新的なアイディアが、理論書に新しい数ページを追加させるということは大変によくあることです。そうやって、音楽も音楽理論も進歩してきたのですから。

 

それでも音楽理論という便利なものについつい縛られてしまうのは、生活を便利にするために作り出したシステムそれ自体が大きくなりすぎてしまい、いつの間にか生活を狭苦しいものにしてしまうということに似ています。

 


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中藤孝二(なかとうこうじ)

1985年生まれ。立教大学卒業。大学在学中よプロ活動を開始。
中学でロックやブルースギターを始め、その後ジャズやR&Bに傾向。
高校ではクラシックギターも修得する。
ジャズギターを杉本喜代志氏に、クラシックギターを安達常一氏にそれぞれ師事。
現在は自身のリーダーカルテットで精力的に活動する傍ら、ダンスミュージックバンドのGUSHや、ジャズビッグバンドの向井志門 & The Swingin’ Devils のメンバーとしても活躍中。

 

 

 

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